| 研究概要 |
線維芽細胞増殖因子(FGF)-7とFGF-10は上皮細胞に局在するKeratinocyte growth factor receptor(KGFR/FGFR2IIIb)に結合し、上皮細胞のみの増殖を促進させることが知られている。ラットの急性膵炎モデルにおいてFGF-7とFGF-10が膵炎の回復期に産生され、再生腺房細胞には正常の腺房細胞に見られないKGFRが発現していることが明らかとなっている。またKGFRは正常膵臓と膵炎組織の膵島に豊富に局在していることから膵島の機能、形態の維持にも重要と考えられる。FGF-7,FGF-10の慢性膵炎後の膵再生における役割を検討するため、Dibutyltin dichlorideをラット頸静脈内に投与し、実験膵炎モデルを作成した。慢性膵炎組織において、線維化巣に接して局在する再生腺房細胞においてKGFRの局在が認められた。このことから腺房細胞の再生にFGF-7,FGF-10がKGFRを介して作用している可能性が考えられた。現在、recombinant FGF-7,FGF-10の膵炎モデルへの投与による組織形態的変化の検討を行っている。近年、神経細胞のstem cellにnestinが発現していることが報告され、nestinが膵島細胞にも局在することから膵のstem cellとして膵臓の再生に重要な役割を果たすものと注目されている。ラットの急性膵炎モデルにおいてnestinの局在を検討したところ、nestinが膵島の毛細血管と膵炎後に新生する血管内皮細胞、新生したductal-ductular structureの周囲にあるmyofibroblastに豊富に認められることを確認した。このことよりnestinが膵臓の血管新生と膵臓の上皮系細胞の再生に関与していることが考えられ、KGFRの局在とも比較検討しその役割を明らかにする予定である。
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