研究概要 |
1.肝細胞のprogenitor細胞における肝癌由来増殖因子HDGFの解析 Oval細胞は肝細胞と胆管細胞に分化しうるbipotentialなprogenitor細胞の一つである。ラットのAAF(acetyl aminofluorene)/PH(肝部分切除)のOval細胞発現モデルを用いて、In Vivoにおける肝臓に出現するOval細胞でのHDGFの発現解析を行った。このモデルでは肝切後5-6日目ごろよりOval細胞が門脈域に出現し始め9日目にピークとなるが、Northern blotによるHDGFの発現も4-5日目頃より発現の上昇が認められ9日目にピークとなり、HDGFの発現パターンはOval細胞の発現とパラレルであった。Oval細胞は非実質細胞画分に存在するが、HDGFは非実質細胞画分に発現が強く認められ、更にOval細胞画分により強い発現が認められた。抗HDGF抗体による免疫染色法(IHC)およびIn situ hybridization(ISH)法にてHDGFはOval細胞に発現していることを確認した。Western blot法の検討にてHDGFはOval細胞の培養株Oc15-5において多量に発現していた。IHCではOc15-5の核に強く染色され、細胞質にも染色が認められた。Oc15-5に対するリコンビナントHDGFの増殖刺激効果は、その高増殖能により軽度であった。現在、HDGFsiRNAを用いてHDGF発現抑制による増殖阻害および分化に対する効果を検討している。更に、肝発生早期でのHDGFの発現をIHC及びISH法にて解析する予定である。 2.HDGFトランスジェニックマウス肝臓における遺伝子発現の解析および肝細胞の分化能の解析 アルブミンプロモーターを用いたHDGF transgenic(Tg)マウスを作製した。HDGF-Tgマウス肝における肝細胞の分化マーカーの発現を解析した。新生児ではTAT,G6Paseは通常のマウスと同程度に発現し、TOは発現していなかった。しかし、生後12週目の成体マウス肝では通常TOが発現誘導され、G6Paseの発現低下が認められるが、HDGF-Tgマウス肝ではTOは発現誘導されず、G6Paseは高発現を維持していた。以上より、HDGF過剰発現により成熟な肝細胞への分化が抑制される可能性が示唆された。
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