高血糖状態は腎においてはTGF-βを介して線維化を促進することが知られているが、肝においては高血糖と線維化促進の関連については十分検討されていない。耐糖能障害は慢性肝炎、肝硬変に合併することが多いため、腎と同様に高血糖が線維化を促進するのであれば、コントロール不良の耐糖能障害は肝病変進展の増悪因子となる可能性があり、適切に血糖をコントロールすることは極めて重要なこととなる。 そこで、耐糖能異常が肝線維化に関連しているか否かの基礎データを得るために、産業医科大学病院第3内科に入院した症例のうち、肝生検が施行されたC型慢性肝炎患者131例を対象として、耐糖能異常合併の有無が肝線維化進展といかなる関連があるかを検討した。方法は、肝線維化の程度の評価は、マッソン・トリクローム染色標本を用い、IBASにて青色部を抽出して単位面積当たりの青色部の面積を算出し、線維化の指標とした。インスリン抵抗性やβ細胞機能を含めた耐糖能障害の評価は75gOGTTにて行ない、以下の結果を得た。耐糖能異常は131例中36例(27.5%)に認められ、うち10例が糖尿病パターンを示した。HOMA-Rは耐糖能異常者において正常者より有意に高値を示した。インスリンの早期分泌能は正常者より耐糖能異常者において有意に低値を示し、さらにインスリン抵抗性の進展に伴って低下していった。肝線維化との関連においては、線維化はHOMA-Rと有意な正の相関がみられた。以上の結果より、C型慢性肝炎において、耐糖能障害はインスリン抵抗性とβ細胞機能低下に基づくものであることが推察され、これは肝線維化と密接に関連していることが示唆された。 今後、耐糖能障害の程度と線維化進展との関連をより明確にするために、各症例の経過を経時的に追跡し、肝障害に合併した耐糖能異常の適切な対処方法を明らかにしていく予定である。
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