生活習慣や耐糖能障害などの生活習慣に起因する異常が、肝発癌を促進する可能性が指摘されているが、治療後の再発に対して、これらの生活習慣に絡む諸問題がどのように影響を及ぼすかについてはふめいである。そこで、当科に入院したC型肝炎ウイルス陽性の肝細胞癌初発例299例を対象とし、飲酒及び喫煙の状態、耐糖能障害と血糖コントロール状態などの背景因子および治療内容と、再発や予後との関連を検討した。飲酒に関しては、習慣的に飲酒を行うものは93例(31.1%)おり、うち36例が大酒家であった。喫煙に関しては、90例(30.1%)が喫煙中であり、過去に喫煙していたものは65例(21.7%)であった。糖尿病は95例(31.7%)で、75g OGTTで境界型であったものは6例であった。初回治療前の肝予備能はChild-Pugh分類で、grade A、B、Cがそれぞれ232例、55例、12例であった。肝細胞癌のステージはstage I、II、III、IV-A、IV-Bがそれぞれ79例、103例、86例、22例、9例であった。全症例における予後は、1年生存率86.9%、3年生存率67.7%、5年生存率45.4%であった。予後影響を与える因子としては、単変量解析では性別、Child-Pugh分類、肝障害度、ステージ、最大腫瘍径および治療法が抽出されたが、多変量解析ではChild-Pugh分類とステージのみが独立した因子として抽出された。さらに、ステージか高いものほど再発率が高く、再発が早いものほど予後は不良であった。また、習慣的な飲酒、喫煙および耐糖能障害合併に関しては、累積再発率および累積生存率に各群間での有意差は認められなかった。以上より、一旦発癌すると、飲酒、喫煙や耐糖能障害は予後には影響しないことが考えられ、発癌の前段階までにこれらの要因をコントロールする必要があるものと考えられた。
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