C型慢性肝炎患者を対象として耐糖能障害と肝線維化の関連を検討した結果、耐糖能異常者は耐糖能正常者より、HOMA-Rは有意に高値で、インスリン早期分泌能は有意に低下しており、肝線維化はHOMA-Rと有意な正の相関がみられた。耐糖能障害合併とC型慢性肝炎の進展に関しての検討では、耐糖能障害合併の有無で、その後10年間の血小板数変化には有意差はみられなかった。しかしBMI24以上の例では、24未満の例に比し、血小板数が低下する傾向が見られた。肝細胞癌治療後の再発と耐糖能障害合併との関連を検討したが、再発に最も強く影響を与えていたものは、初発時の進行度と肝予備能であり、耐糖能障害を含めた環境・生活因子と累積生存率、再発率との関連は認められなかった。また、アミノ酸刺激によるインスリン、グルカゴン分泌と血糖値の変動に関する検討では、G/Iモル比の低下にもかかわらず早期肝硬変では血糖値が上昇し、進行肝硬変ではその上昇が軽度となることが観察され、肝予備能の低下とともにインスリンやグルカゴンに対する抵抗性が変化してくることが推測された。以上より、今回の研究では、耐糖能障害が肝病変の進展に促進的に働くとの結果は得られなかったが、耐糖能障害は肝線維化と密接に関連していることが示唆され、さらに、一旦発癌すると、耐糖能障害は予後に影響しないことから、発癌の前段階までに耐糖能障害はコントロールする必要があるものと考えられた。この際、肝障害に伴う耐糖能障害はインスリン抵抗性とβ細胞機能低下に基づくものであること、また肝予備能によってインスリンやグルカゴンに対する反応性が異なることから、耐糖能障害のコントロールを行う際には、肝予備能の状態を考慮して治療方法を検討する必要があると思われた。
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