平成15年度にはエタノールの慢性摂取によって惹起されるアルコール性膵障害の病態解明のために、Tsukamotoらの方法に準じてラットに恒久的胃瘻を作製し、これにアルコール投与を行ったところ、比較的高濃度である18g/kg/日までのアルコールを12週間投与することが可能であったが、膵の光顕像では膵炎像は認めず、腺房細胞の形態はよく保たれていた。このため、実験系をin vivoからin vitroに変更した。 本年度では、アルコールによる膵星細胞刺激における酸化ストレスの役割と、抗酸化物質の効果を検討した。雄性Wistarラットから分離、培養した膵星細胞にエタノールを添加したところ、総スーパーオキサイド・ジスムターゼ(SOD)活性の低下が認められたことから、エタノールは膵星細胞に酸化ストレスを誘導した。また膵星細胞では細胞増殖とalpha-smooth muscle actin(SMA)発現の増加が認められたことから、エタノールは膵星細胞を活性化した。さらに培養上清中のコラーゲン濃度が上昇したことから、エタノールは膵星細胞からのコラーゲン分泌を刺激した。抗酸化剤であるエピガロカテキンガレートやアスコルビン酸をアルコールと同時に膵星細胞に添加したところ、総SOD活性の低下、細胞増殖やalpha-SMA発現の低下、コラーゲン分泌の低下が認められたことから、抗酸化剤はアルコールによる膵星細胞の活性化を抑制し、膵線維化を抑制する可能性が示唆された。
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