研究概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)は、ゲノム構造や複製様式が異なっているにもかかわらず、生物学的共通点を持っている。(たとえば、両者とも増殖中間体はRNAであり、肝細胞で日殖し、細胞障害性はないものの宿主免疫反応を介して持続性炎症を惹起し、肝細胞癌の発生にも関すること、等である。) HBV RNAのε構造とHCV RNAの3'X構造は、両ウイルスの複製・パッケージングに重要である。我々は、両構造に同一の7塩基配列を含む類似2次構造があることを報告した(Proc Japan Acad 78:12-14,2002)。そして、この類似構造が両ウイルスの生物学的共通性に関与しているという仮説を立てた。 その検証のため、肝細胞抽出物中に両構造と結合する蛋白があるかどうかを調べた。両構造をとり得るようなDNAオリゴマー(但し、チミンをデオキシウリジンで置換)およびRNAオリゴマーをプローブとして、SDS-PAGE-サウスウェスタン法(HepG2細胞抽出蛋白)を行った。HBVεおよびHCV3'Xに対応するオリゴマーに共通して結合する110kDa、35kDa、15kDaの蛋白を認めたが、そのうち特に35kDaの蛋白が強いシグナルを示した。 それらの蛋白を同定するために、λgt11を用いてHepG2cDNA発現ライブラリーを作製し、サウスウェスタン法にて上述のオリゴマーと結合する蛋白の単離を試みた。結合の条件を変えながら約60万クローンをスクリーニングした結果、4つの独立したクローンが単離された。そのうちの一つはリボゾーム結合蛋白L5であり、アミノ酸配列から推定される分子量は約34kDaで、目的とする蛋白の予想サイズと一致した。その他の3クローンも含めて、現在、全長の単離を試みている。これらの蛋白がHBV・HCV両ウイルス増殖に与える影響を調べることが今後の課題である。
|