研究概要 |
研究代表者らは、赤毛猿より分離されたHhをC3Hマウスに持続感染させることにより、Helicobacter heilmannii(Hh)の菌体は、Mongolian gerbilに感染したHpと比べて、粘膜表層に加えて粘膜深部、特に分化帯の位置する腺頸部および胃底腺腺腔内および壁細胞の細胞内小管に存在し、酸分泌が低下することを明らかにした。この所見に加え、Tunel法、caspase 3,8,9免疫組織化学の検討から、Hh陽性壁細胞がapoptosis陽性所見を示し、さらにPCNA, Musashi-1陽性細胞が存在することが明らかとなった。この所見は、Hh感染が、壁細胞からの酸分泌を直接抑制し、前ガン状態と考えられる低酸、無酸状態をもたらすことおよび分化帯に存在する胃粘膜幹細胞に作用することを示すと考えられた。 さらに、昨年Hhに特異的なprimerが報告されたことから、その配列を用いて、従来用いてきた菌および猫における胃粘膜内の感染状態をPCR法により検討した。その結果、我々の菌および用いた家猫の菌がいずれもHhであると、明確に同定された。 また、胃潰瘍症例の胃粘膜内におけるurease陽性者のうち、Helicobacter pylori抗体が陰性者を中心にPCR法、in situ hybridization法を施行した結果、本邦においても、MALTリンパ腫以外の症例においてもHh感染者が存在し、Hpとの混合感染も含めて、病原性にも関係することが明らかとなった。
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