研究概要 |
1.DNA-PKcs変異の簡便な検出系の開発 実験に使用するマウスを得るためのDNA-PKcs変異のタイピングを簡便に行う為に、新たにプライマーを設計して蛍光標識オリゴマーを作成し、シークエンサーを用いたAFLP解析によるDNA-PKcs変異の簡便な検出系を開発した。 2.自然発生及びAOM誘発突然変異の変異体頻度(MF)と変異スペクトラムに対するDNA-PKcs失活の影響欠失型変異検出系(Spi-assay)により解析した。DNA-PKcs変異のホモ接合体(scid/scid)及び野生型(+/+)マウスの大腸粘膜における自然発生突然変異のMFに有意差は認められなかったが、azoxymethane(AOM)誘発突然変異のMFはscid/scidの方が+/+より高い傾向が認められた(P=0.053)。変異スペクトラムの解析より、5cfd/5cfdから得られた変異体には、1kbp以上の大きさ(大欠失型)の欠失変異の多い傾向が認められ、特にAOM誘発突然変異では、有意に高かった(P=0.048)。 3.AOM誘発突然変異及び発がんに対するDNA-PKcsのhaploid insufficiencyの影響 自然発生突然変異の場合、ヘテロ接合体(scid/+)のMFは、特に100bp以下の欠失(小欠失型)で+/+よりも高い傾向が認められた。AOM誘発突然変異の場合は、MFは、5cfd/5cfd,5cfd1+,+/+の各遺伝子型で、106個のプラーク当たり7.3±1.6,25.9±12.5,5.7±2.9であった。また、scid/+は+/+よりも、小欠失のみならず、有意に大欠失型のMFが高かった。小欠失型のみならず、大欠失型のDNA修復機構においてもhaploid insufficiencyが存在している可能性が示唆された。大腸発がん性に関しては、組織学的に詳細に検討中である。
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