蛋白質翻訳後修飾のひとつであるSmall ubiquitin-like modifier(SUMO)の標的蛋白質への共有結合は、ユビキチン経路に類似した過程で行われる。第一段階としてAOS1とUBA2から成るヘテロダイマーがE1としてSUMOを活性化し、E2としてUBC9が標的蛋白質への結合を担う。このとき幾種類かのE3が知られており、SUMO修飾の促進に働いている。SUMO修飾は、細胞内における蛋白質の局在化、核移行、シグナル伝達、転写、複製、およびDNA修復など、生体反応の様々な過程に関与している。これまでの我々の研究から、膵臓の腺房細胞には非常に多くのSUMOが存在することが明らかとなった。最近、我々は、SUMO-3をbaitとして酵母Two-hybrid法を行い、相互作用する蛋白質としてTTRAP(TRAF and TNF receptor-associated protein)を同定した。TTRAPのC末側には、Mg^<2+>/Mn^<2+> phosphodiesteraseとしての基本的なmotifが保存されている。大腸菌で発現させ精製したTTRAPではAPサイトに対して弱い切断活性が認められた。DNA-蛋白質複合体の形成をEMSAで観察したところ、この結合はTDGの量依存的であり、TTRAPがDNA-蛋白質複合体を形成する際には、TDGが律速的に働くことが示唆された。DNA-TDG-TTRAP複合体に抗TTRAP抗体を作用させると、移動度はさらに遅くなり三者の複合体が比較的安定であると考えられた。TTRAPは、p53、UBC9、PCNAとも相互作用し、DNA修復、複製、および転写制御に関与することが知られている。以上のことから、TTRAPは、DNA修復においてはTDGと協調して損傷DNA鎖の切断に関与し、転写においては他の転写制御因子と協調してその制御に関与していると考えられた。
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