我々はマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)の役割として心筋梗塞発症早期には血管新生を促進し、心筋梗塞後期ではリモデリングに対して促進的に作用すると仮設し、これを検討するためにラット心筋梗塞モデルを用いてMMP阻害薬の効果を検討した。MMP阻害薬を心筋梗塞発症直後より投与した群が発症1週後より投与した群や発症1週間のみ投与した群に比較してリモデリングの抑制効果が強いという結果を得た。次にヒトにおける心室リモデリングとMMPの関係を検討するために、ヒト心嚢液中でのMMP活性について検討を加えた。心嚢液中で酸化ストレスマーカーである8-iso prostagrandin F2a濃度とMMP活性との間には正の相関が認めら、また左室容積との間にも正の相関を認めた(Europ Heart J 2003)。更に急性心筋梗塞(AM1)患者におけるMMP活性の亢進は慢性期の心筋梗塞後リモデリングの予測因子と成り得るのではないかと考えた。まずAMI患者の末梢循環血中のMMP活性の変化を入院時より経時的に観察し、発症直後に高値を示し、発症5日目には低下し、発症14日目に再度上昇することを見いだした。発症14日目の末梢血中MMP活性が亢進している群では、低値群に比較して梗塞慢性期(発症後6ヶ月)における心室リモデリングが進行すること見いだした(Int J Card 2005 in press)。ヒトにおけるMMPと血管新生との関係を検証するために、米国のChilian教授のグループとの共同研究で、MMPがプラスミノーゲンを器質として産制される血管新生抑制因子のひとつであるアンジオスタチン濃度が心嚢液中で亢進している冠動脈疾患患者では冠動脈側副路の発達が低下していることも報告した(Am J of Physiol 2005 in press)。
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