虚血性心疾患とcoupling factor 6 (CF6)の関係 末期腎疾患患者95名(男性52名、女性43名、平均年齢58歳)を対象とし、血液透析前に採血を行った。CF6はradioimmunoassay (RIA)法で、ADMAはHPLC法で測定した。更に、心血管事故の有無について病歴と検査成績より断面調査を行った。【結果】1)末期腎疾患患者の血中coupling factor 6濃度とADMA濃度は健常者に比較して、約3倍有意に高値であり、両者の問には正の相関が認められた。2)心血管事故は51名の末期腎疾患患者で合計66件認められ、心筋梗塞3件、脳卒中11件、狭心症20件、心不全14件、不整脈16件、末梢循環不全2件であった。虚血性心疾患(心筋梗塞+狭心症)を有する末期腎疾患患者は心血管事故を有しない患者と比較して、血中CF6濃度とADMA濃度は有意に高値であった。重回帰分析では、末期腎疾患患者における血中CF6濃度とADMA濃度は虚血性心疾患の合併に独立した危険因子であった。【結論】末期腎疾患患者では血中coupling factor 6濃度が高値を呈し、虚血性心疾患の発生に関連を有することが示唆された。 心嚢液中CF6の同定 虚血性心疾患並びに心臓弁膜症でACバイパスまたは弁置換施行患者から、当院第一外科との連携により術中に心嚢液を採取し凍結保存を行った。心嚢液中にCF6が存在するかを我々が開発したCF6のRIA法にて測定し、血中レベルの4-5倍高値で存在することを明らかにした。これまで我々は、CF6が主に血管内皮細胞で産生・放出され、ホルモンとして血管収縮を惹起させることを報告したが、今回の成績では、心臓が重要なCF6産生臓器であり、高濃度で分泌されたCF6が心臓局所で、autocrineまたはparacrine的に作用する可能性が示唆された。
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