平成15年度の研究実績に関して以下に述べる。 ラミンA/C遺伝子障害マウスの作成 1、房室ブロックを先行発症し、心室頻拍、心不全を発症した拡張型心筋症患者より新規ラミンA/C遺伝子異常を同定した。この遺伝子異常はexon5内に5塩基が挿入される変異であり、これまでに報告の無い新規遺伝子異常であった。 2、マウスとヒトのcDNAライブラリーより正常ラミン遺伝子を同定した。ドミナントネガティブ効果による細胞機能の変化を解析するために、このcDNAを鋳型に上記新規変異cDNAをsite-directed mutagenesisにて作成した。正常ならびに変異cDNAにGFPを発現マーカーとして付加した。 3、またhaploinsufficiency効果による細胞機能の変化を解析するための正常遺伝子の発現を抑制する手法として、gene knockoutでは無く、siRNAによる遺伝子ノックダウンを行うこととした。マウスラミンA/C遺伝子の導入siRNAとしてはHarborth Jらの報告(Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2003;13(3)83-105)を参考にし、50%以上の抑制効果を有するシークエンスを用いた。siRNAの発現の有無を確認するためにGFPをマーカーとして付加した。 4、上記のように作成した変異cDNAをマウス線維芽細胞、マウス脂肪細胞に導入し、遺伝子発現をGFPにて確認した。siRNAによるラミン遺伝子発現抑制の効果は現在評価中である。またそれぞれの細胞構造・機能への影響を評価すべく特異抗体を用いた免疫染色ならびに細胞内シグナリング解析を行っている。 5、現在、正常ならびに変異、siRNAの導入遺伝子をマウス受精卵へ導入しトランスジェニックマウスの作成中である。 6、マウス新生児初代心筋細胞のラミンA/C発現の経時的変化を確認し、変異cDNAを導入発現する条件を検討している。
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