研究概要 |
GFP陽性骨格筋細胞を心筋細胞と共培養すると、骨格筋細胞の一部が心筋特異的トロポニンT(cTnT)を発現し、骨格筋由来細胞の一部が心筋細胞の形質を獲得したと考えられた。平成15年度は、この形質転換に以下の因子が関与するか検討した。 1.機械的刺激:GFP陽性骨格筋細胞を心筋細胞と共培養する時にnifedipine 5μMを添加すると、cTnTを発現するGFP陽性骨格筋細胞数は未添加対照群に比較して著明に減少した。GFP陽性骨格筋細胞と心筋細胞を伸展性のシリコン膜上で共培養し、周期的受動的伸展刺激を加えると、nifedipine 5μMによる抑制効果は消失した。 2.Ca^<2+>および増殖成長因子:Ca^<2+>ionophoreであるBay K、増殖成長因子であるアンジオテンシンII、エンドセリン-1、イソプロテレノールをそれぞれ添加して、GFP陽性骨格筋細胞と心筋細胞の共培養を行ったが、これらの薬剤はcTnTを発現するGFP陽性骨格筋細胞数に影響を与えなかった。Protein kinase C抑制薬であるCalphostin C、TPAを添加して共培養すると、cTnTを発現するGFP陽性骨格筋細胞数は減少した。 3.calmodulin, calcineurin : GFP陽性骨格筋細胞を心筋細胞と共培養する時に、calmodulin抑制薬(W7)、calcineurin抑制薬(FK506,cyclosporin A)をそれぞれ添加すると、骨格筋細胞の心筋細胞への形質転換は抑制され、cTnT陽性かつGFP陽性骨格筋細胞の数は対照に比較して有意に減少した。 骨格筋細胞培養上清中の遅延接着細胞には、筋芽細胞を主体とする早期接着細胞と比較して、心筋細胞との共培養によりcTnTを発現するGFP陽性骨格筋由来細胞が多く存在した。このことは、骨格筋由来細胞の始源培養中には多能性幹細胞が含まれていることを示唆した。
|