研究課題/領域番号 |
15590722
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石坂 信和 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (20270879)
|
研究分担者 |
佐田 政隆 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (80345214)
塚本 和久 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (20251233)
森 一郎 和歌山県立医科大学, 附属病院, 助教授 (10157852)
|
キーワード | アンジオテンシンII / 酸化ストレス / 老化 |
研究概要 |
われわれは以前ラットへのアンジオテンシンII持続投与により、腎において鉄の沈着が誘発され、この現象が、アンジオテンシンII投与による蛋白尿増加の増悪因子と成っていることを報告した。今回、アンジオテンシンIIが血管においても鉄代謝や、鉄関連遺伝子の発現調節に影響を及ぼしているかどうかについて検討した。 免疫染色ではラット大動脈の内皮および外膜においてつよいフェリチンの発現を認め、鉄染色により外膜へ遊走した炎症細胞への鉄沈着を認めた。アンジオテンシンII投与は、生体酸化ストレスのマーカーであるプロスタグランジンF2αや4-HNE修飾蛋白量を増加させたが、アンジオテンシンII投与ラットに鉄のキレーターまたはラディカルスカベンジャーを投与すると、血行動態には影響することなしに、これらの酸化ストレスのマーカーの増加を抑制した。このことは鉄代謝の異常がアンジオテンシンIIによる酸化ストレス亢進の増悪因子となっていることを示唆している。 アンジオテンシンII投与は血管壁においてMCP-1、TGF-βなどの炎症関連遺伝子の発現を亢進することが報告されているが、鉄のキレーター投与はこれを抑制したことから、鉄代謝の異常は、アンジオテンシンII投与ラットの血管においても生理的な意義を有する可能性が示唆された。一方、腎においては鉄のキレーターはアンジオテンシンIIによって減少した老化関連遺伝子であるklothoの発現を回復した。klothoは動脈硬化や、血管内皮障害に抵抗的に働くことから、鉄代謝の是正は、klothoの発現の調節というメカニズムによっても、血管保護作用がある可能性があると考えられた。
|