我々はインスリン抵抗性状態で脂肪組織から分泌されるtumor necrosis factor(TNF)-α、interlektin(IL)-1などのサイトカンの血管機能に対する効果を検討するために、obese Zucker(OZ) ratにこれらのサイトカンの産生阻害薬であるCNI-1493を投与し、その効果を検討した。OZ ratの内臓脂肪および血液中のTNF-α、IL-1濃度は対照のlean Zucker(LZ) ratに比べて有意に上昇していたが、CNI-1493投与によりこれらの組織濃度は有意に抑制された。Acetylcholine(Ach)に対するOZ rat由来大動脈リングの内皮依存性血管拡張反応はLZ ratに比べると有意に低下していたが、OZ ratにCNI-1493を投与するとOZ rat由来大動脈系リングの内皮依存性血管拡張反応はLZ ratと同じレベルまで改善した。さらに、OZ ratの大腿動脈内腔をワイヤーで損傷し、新生内膜の形成を調べると、LZ ratに比べ、新生内膜の形成は有意に増加していた。一方CNI-1493投与によりOZ ratの新生内膜形成は有意に抑制された。以上の結果はインスリン抵抗性状態にあるOZ ratの血管の内皮依存性拡張反応の低下および、新生内膜形成促進はTNF-α、IL-1などのサイトカンの作用による可能性を示唆する。現在我々は内因性TNF-αの作用を阻害したときの血管機能の変化を特異的に検討するために、TNF-α受容体の細胞内シグナル伝達domainを欠損するdominant negative mutantを作成し、アデノウイルスに組み込んでいる。このウイルスを使用することにより、TNF-αに代表されるサイトカンの役割を、より特異的に検討することができると期待している。
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