研究概要 |
心筋細胞は生後まもなく増殖能を失い終末分化状態に入る。我々は、これまでに、細胞周期制御因子サイクリンD1が本来機能する核に移行しないことを見いだし、サイクリンD1を核移行させることよって心筋細胞の分裂誘導に成功した(Tamamori-Adachi M, et al. Circ Res, 2003)。本研究では、D1NLS/CDK4誘導心筋分裂は、数回の分裂後に阻害されることを明らかにした。そのメカニズムについて検討するため細胞周期抑制因子の解析を行ったところ、強制分裂後に、p27kip1が蓄積誘導されること、その分解が阻害されていることを見出した。さらに、増殖細胞におけるp27の分解に必須なユビキチンリガーゼであるSKP2のin vitro ubiquitylation活性が著明に高く、心筋では、SKP2のユビキチン・プロテアソーム系による分解が亢進していることがわかった。そこでSKP2発現アデノウイルスベクターによって、p27を特異的に分解すると細胞増殖はさらに促進された。このことから終末分化した心筋細胞の強制増殖では、p27が集積してブレーキとして働くこと、そのメカニズムにはSKP2の過剰なユビキチン活性の亢進が関与していることを見出した(現在論文準備中)。 一方、増殖能を残している胎仔心筋細胞の解析から、p27、SKP2のユビキチン化活性が、心筋終末分化とリンクしていることも見出している。これらのことは、心筋細胞増殖停止のメカニズムには、まずサイクリンD1の核内発現の障害、さらにはp27^<kip1>分解障害の少なくとも2段階の制御機構が存在することを示している。
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