心筋でのタンパク質発現は転写時あるいは翻訳後修飾(リン酸化、スプライシング)を受けることから、ゲノム解析であきらかになった遺伝子がコードする個体レベルの数よりも実際の病態でのタンパク質発現量が何倍も多くなっている。特に心不全の病態形成が単一の因子で形成されることはないという事実から、不全心での特異的発現タンパク質の同定、有意に発現変化するタンパク質を網羅的に探索することが大変重要であると考えられる。そこで我々はその研究方法としてプロテオーム解析によるディファレンシャルディスプレーを取り入れた。頻拍誘発性心不全イヌモデルを用いて、その心筋組織でのタンパク質発現を正常心筋と比較し、発現検証、特異的発現タンパク質の同定を行った。不全心にて36タンパク質スポットが正常心と比して変化していた。特に発現増加の大きい8スポットについて2DE/MALDI-TOF MSによるプロテオームプロファイリング、質量分析データーベース解析を行った結果、特に抗アポトーシス作用に関連するalpha B-crystallinやsmall heat shock protein 20等が不全心にて有意に増加していることを同定した。心不全形成過程において今まであまり関与が明らかでなかったsmall heat shock protein群が病態形成に重要な働きをしていることが示唆された。この研究成果は第68回日本循環器学術総会にて発表する。
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