本研究は心臓特異的転写因子Nkx2.5のプロモーター領域を同定することにより、Nkx2.5の上流にあると考えられている心筋細胞系列を決定する因子を単離することを目的としている。われわれはNkx2.5の上流60kbをBACライブラリーより分離し、約70種類のレポーターコンストラクトを作製した。培養心筋細胞を用いたin vitroの系でそれらのコンストラクトの活性を調べたところ、6箇所レポーター活性の強い領域を見いだした。これらは心臓線維芽細胞やCOS細胞ではまったく活性がなく、in vitroの系では心筋細胞特異性があると考えられた。そこでこれら6種類のレポーターコンストラクトでトランスジェニックマウスを作製し、in vivoでの活性を調べた。6種類のうち、1種類は心臓以外での発現を認め、3種類はあまり活性がなくin vitroでの結果を反映しなかったが、2種類ではin vivoでも心筋に明らかな活性を認めた。現在、この2つのラインで、発生の各段階でのレポーター遺伝子の発現を調べているところである。今後、再びin vitroの系で、これら2種類のコンストラクトにいろいろな変異を導入してレポーター活性の変化を調べ、重要な領域を同定する。その変異によってin vivoでも活性が失われるかトランスジェニックマウスを用いて調べたのち、その部位が既知のコンセンサス配列であれば、その部位にコンセンサス配列に対応する転写因子が本当に結合するかEMSA法などを用いて検討する。その部位が未知の配列であれば、その配列をベイトとしたyeast one-hybrid法にて未知の転写因子を見つけていく方針である。
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