サイトカインシグナル伝達系であるJAK/STAT系を阻害する負の調節因子、JAK-binding Protein/suppressor of cytokine signaling 1/STAT-induced STAT inhibitor 1(JAB/SOCS-1/SSI-1)の作用を利用した抗動脈硬化治療の効果を検討するため、JAB/SOCS-1/SSI-1をCD11bプロモーターにより単球/マクロファージに過剰発現させたトランスジェニックマウス(JAB Tg)と動脈硬化モデルマウスのapolipoprotein E欠損マウス(apoE^<-/->)を交配し、JAB Tg/apoE^<-/->マウスを作成した。 30週齢のJAB Tg/apoE^<-/->マウスとJAB WT/apoE^<-/->マウスを麻酔下に屠殺し大動脈の展開標本を作成、oil red-Oによる脂肪染色を行い、NIH image softwareにより大動脈内腔表面積に対するoil red-O陽性領域の面積比を計測した。その結果、面積比はJAB WT/apoE^<-/->群の24.5±7.6%(mean±SD)に対し、JAB Tg/apoE^<-/->群では16.9±2.7%と動脈硬化病変が抑制される傾向を示した(p=0.07)。 大動脈病変を評価したマウスの血清中の総コレステロール(T-CHO)値とtriglyceride(TG)値を測定したところ、T-CHO値はJAB WT/apoE^<-/->マウス530±102mg/dL、JAB Tg/apoE^<-/->マウス434±28mg/dL、TG値はJAB WT/apoE^<-/->マウス110±51mg/dL、JAB Tg/apoE^<-/->マウス95±32mg/dLと、いずれも差を認めなかったため、JAB Tg/apoE^<-/->マウス群に見られた動脈硬化病変面積比の低下傾向(p値=0.07)は、全身的な脂質代謝への影響によるものでは無いと考えられた。
|