新たな心不全治療の開発に関する研究-細胞療法へのサイトカインシグナルの応用-

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15590741
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 瀧原 圭子 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (70252640)
• キーワード: 心不全 / サイトカイン / 心筋細胞 / 心筋リモデリング / 細胞治療 / 幹細胞

研究概要

骨髄幹細胞をはじめ、さまざまな組織に存在する成体幹細胞を用いた細胞治療が、心不全の新たな治療法として注目されているが、導入細胞がどのような細胞(心筋細胞、血管内皮細胞など)に分化することにより心機能改善効果を示しているのか、これらのプロセスを支持する分子基盤に関しては全く明らかにされていない。本研究において、成体幹細胞がどのような分子基盤を介して心機能改善効果を示していくのか、さらに、傷害心筋から出されるどのようなシグナルが成体幹細胞の心筋への誘導を引き起こすのかについて検討した。我々がこれまでの研究において作製してきた、wild-type STAT3、dominant negative-type STAT3、constitutive active STAT3あるいはSmad1を心筋特異的に高発現するトランスジェニックマウスを用い、心筋傷害/心筋リモデリングのモデルとして心筋梗塞を作製した。本年度は、安定して心筋梗塞後心不全モデルを作製する、マウス心臓超音波検査法の確立を重点的に行った。constitutive active STAT3において、コントロールマウスと比べ心筋梗塞後の生存率は有意に高く、心筋リモデリングが抑制されている結果が得られた。そこで、Green fluorescent proteinトランスジェニックマウスより骨髄細胞を得て、上記のトランスジェニックマウスに移植した後に心筋梗塞を作製し、骨髄由来細胞を傷害心筋で確認するため、マウス骨髄移植の基礎実験を行った。今後は、導入された細胞の生存あるいは分化/増殖の確認、および、これらに関与するサイトカインおよびサイトカインシグナルについても検討を加えていく予定である。

研究成果

• [文献書誌] M.Kawai et al.: "Ral GDP dissociation stimulator and Ral GTPase are involved in myocardial hypertrophy"Hypertension. 41. 956-962 (2003)
• [文献書誌] T.Kuwasako et al.: "Lipoprotein abnormalities in human genetic CD36 deficiency associated with insulin resistance and abnormal fatty acid metabolism"Diabetes Care. 26. 1647-1648 (2003)
• [文献書誌] Y.Nakaoka et al.: "Activation of gp130 transduces hypertrophic signal through interaction of scaffolding/docking protein Gab1 with tyrosine phosphatase SHP2 in cardiomyocytes"Circ Res. 93. 221-229 (2003)
• [文献書誌] K.Yamauchi-Takihara: "Complexity of transcriptional regulation of the tumor necrosis factor-alpha gene"J Mol Cell Cardiol. 35. 1179-1181 (2003)
• [文献書誌] H.Hirota et al.: "Circulating interleukin-6 related cytokines and their receptors in patients with congestive heart failure"Heart Vessels. in press.
• [文献書誌] K.Yamauchi-Takihara et al.: "Kluwer Academic Publishers"A novel role for cytokine signaling in cardiac remodeling. In : Cardiac Remodeling and Failure. 350 (2003)