1.研究目的 脂質コアの量は動脈硬化病変の安定性を決めるきわめて重要な因子であり、それを生体で描出できる意義は極めて大きい。血管内エコー画像のウエーブレット解析が動脈硬化プラークの脂質コアの同定に有用であることを世界に先駆けて発表してきた。そこで、冠動脈内エコー画像のウエーブレット解析を、現在よりも高速にカラーマッピング表示できる新型の血管内エコー法を開発して、得られた画像を冠動脈の組織学的所見と比較する。このことにより、この方法が冠動脈プラークの組織性状診断をin vivoで行うために有用な方法であり、臨床応用が可能であるかが明らかとなる。 2.研究方法 1)冠動脈インターベンション(PCI)、特にDirectional Coronary Atherectomy(DCA)の適応と考えられる虚血性心疾患患者(20例)の病変部の血管内エコー像をPCI施行前に血管内エコー装置により撮像し、録画する。 2)その後、DCAを行い、切除されたプラーク切片はホルマリン固定を行い、顕微鏡下に組織性状診断を行う。 3)次にDCA終了時の病変部の血管内エコー像を撮像し、切除部位を確認する。(担当 藤井) 4)上記の画像をカラー血管内エコー構築装置に転送してウェーブレット解析を行い、その結果をカラー表示したのち、それを通常のエコー画像にオーバーラップさせて表示する(一部申請者により開発済み)。 5)切除されたプラーク切片の組織診断所見とカラー血管内エコー像を対比させ、Lipid-rich plaqueの検出率が100%となるようにカラー描写設定プログラムの設定を構築する。 3.研究の成果 DCAの適応と考えられる虚血性心疾患患者(10例)の病変部の血管内エコー像をPCI施行前に撮像し、録画した。この画像をカラー血管内エコー構築装置に転送してウェーブレット解析を行い、その結果をカラー表示した。切除されたプラーク切片の組織診断所見とカラー血管内エコー像を対比させたところ、15病変中13病変の組織性状が一致した。 Lipid-rich plaqueは7病変あり、その検出率は100%であった。さらに一致しなかった2病変は平滑筋や細胞浸潤が見られる組織であり、Lipid-rich plaqueではなかったが、これらを描写するカラー描写設定プログラムを考案中である。またin vivoでの経時的組織変化についても現在検討を行っている。
|