研究課題
ヒト免疫不全ウイルスの転写因子Tat蛋白質に認められる11アミノ酸からなる細胞侵入性プペチドを用いて、血管の組織や細胞に蛋白質を、迅速、可逆的、定量的に導入する方法を確立した。細胞侵入性プペチドとの融合蛋白質は、組換え蛋白質として、細胞の発現系を用いて作製した。このための発現ベクターを独自に開発した。今年度、低分子量G蛋白質RhoAおよびRac1の阻害蛋白質、Akt不活性化型変異体を用いて次の4点を明らかにした。(1)RhoAおよびRac1阻害蛋白質を培養血管内皮細胞に導入し、蛋白質導入が可逆的であることを初めて明らかにした。特定の時間だけ阻害蛋白質を作用させることによって、細胞周期S期進行のためには、G_1後期にRho蛋白質の活性を必要とすることが初めて明らかとなった。(論文公表済み)(2)RhoA阻害蛋白質を、血管条片に24時間させておくと、内皮細胞のNO産生が亢進し、収縮性が低下することを明らかにした。Rac1阻害蛋白質にはそのような作用は認められなかった。生体血管内皮細胞のNO産生調節において、RhoAが生理的役割を果たすことが初めて明らかとなった。(論文印刷中)(3)培養血管平滑筋細胞にRac1阻害蛋白質を24時間導入すると、トロンビン受容体の細胞膜上の発現が低下することを見出した。トロンビン受容体の蛋白質およびmRNA総発現量には変化がなかった。RhoA阻害蛋白質はトロンビン受容体の発現に影響を与えなかった。血管平滑筋細胞においてRac1は、細胞内膜輸送を促進し、トロンビン受容体の発現を増加させることが示唆された。(論文審査中)(4)エストロゲンは、TNF-_αが引き起こす血管内皮細胞のアポトーシスを阻害したが、Akt不活性型変異体を導入しておくと、エストロゲンによる抗アポトーシス作用が消失した。これにより、エストロゲンによる内皮細胞抗アポトーシス作用にAktが関与することを初めて明らかとなった。(論文公表済み)
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