研究課題
基盤研究(C)
虚血性僧帽弁逆流は、虚血性心疾患例の慢性期死亡を倍増させる独立した危険因子である。心筋梗塞後の左室リモデリングによる乳頭筋の外側への変位が、僧帽弁尖を異常に牽引し(弁tethering)、その閉鎖を阻害し、逆流を発症させる基本的な機序である。心筋梗塞後の左室リモデリングにおいて、レニンアンギオテンシン系は中心的な役割を果たす(レニンアンギオテンシン系の賦活化はリモデリングを助長する)が、レニンアンギオテンシン系の虚血性僧帽弁逆流に及ぼす影響は未だ検討されていない。我々は、「レニンアンギオテンシン系が遺伝子レベルでブロックされている環境下では虚血性僧帽弁逆流の発生は抑制される」と仮説を立て、wild typeマウスとAngiotensin II type 1A受容体ノックアウトマウスにおいて心筋梗塞を作成し、慢性期の虚血性僧帽弁逆流を比較しようと計画を立てた。wild typeマウスにおいて心筋梗塞を作成すると、左室拡大がより高度で虚血性僧帽弁逆流を伴うが、Angiotensin II type 1A受容体ノックアウトマウスにおいて心筋梗塞を作成しても左室拡大はより軽度で虚血性僧帽弁逆流も伴わないことが多いことが判明した。以上より、心筋梗塞発症後にレニンアンギオテンシン系の賦活化により、左室リモデリングを促進することが慢性期の虚血性僧帽弁逆流発症の原因となることが示唆された。
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