研究概要 |
心筋への遺伝子投与法としてはアデノウイルスベクターが最も有効であるが心筋毒性、副作用が懸念される。そこでCAGプロモータープラスミドによる遺伝子治療臨床応用を考慮し、各種CAGプロモータープラスミドを作製し心臓での遺伝子発現を検討した。その結果pCA1プラスミドが従来の心血管系遺伝子治療に汎用されているCMVプロモータープラスミドに比べラット心において、5-10倍遺伝子発現が高かった。またセンダイウイルスベクター(SeVV)の心血管系遺伝子治療応用の可能性を検討した。In vitro, in vivoどちらにおいても心筋細胞でのセンダイウイルスベクターによる高い外来遺伝子発現が確認され、プラスミドおよびSeVVが心筋梗塞治療に有用な遺伝子治療法として確認された。 治療遺伝子として血管新生因子のひとつであるangiopietin-1(Ang1)遺伝子を用いアデノウイルスベクター(AdV)による遺伝子治療を試みた。Ang1遺伝子治療は治療早期の虚血改善をもたらし、その機序として新生血管誘導のみならず抗炎症作用が考えられた。AdVを用いたAng1遺伝子による心筋梗塞(AMI)モデルに対する遺伝子治療がAMI死亡率を低下させ、心筋梗塞巣を縮小し、心機能を改善することが確認されたが、臨床応用をめざしAng1発現プラスミドおよびAng1発現SeVVによるAMI治療効果を検討した。その結果AdVと同様に極めて良好なAMI治療効果が得られた。特にAMI急性期でのAng1治療効果を検討したところCPKの有意な減少、毛細血管減少の抑制など梗塞後早期に効果が認められた。また骨髄幹細胞による虚血治療効果を検討したところ、治療後2週間と比較的遅れて治療効果が発現されたのに対し、Ang1遺伝子により修飾した骨髄幹細胞が治療早期(治療3日後)にその虚血改善効果を発揮しうることを明らかにした。さらにAng1以外の治療遺伝子としてAngiopoietin関連遺伝子(ARP : Ang-1,2およびAngiopoietin related proteinであるAngptl4遺伝子)の治療効果を検討した結果Angptl4がAng1同様の治療効果を持つことが確認された。しかしAng1遺伝子の効果はAngptl4と比べてもより強力でありARPの中でAng1遺伝子がAMI治療に最も適していることが確認された。 以上、Ang1遺伝子治療が心筋梗塞治療に有効であることが確認された。
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