研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、我々の開発したブタ冠微小血管攣縮モデル(Cardiovasc Res 1998;38;772-781,J Am Coll Cardiol 2001;37:308-315)を用いて冠微小血管攣縮に関与する因子を血管内皮機能不全と血管平滑筋過収縮の両面から検討し、その本態に迫ることである。2年間の研究成果は以下の通りである。ブタ冠動脈左前下行枝(LAD)の血管内皮細胞を2週間毎に4回バルーン損傷し、0.05μg/kgの少量のアセチルコリン(ACh)を冠動脈内投与すると、LADバルーン損傷部では冠血管の狭窄は起こらずに著明な冠血流低下を認めた。これらの結果より、ACh投与により何らかの因子を介して冠微小血管の攣縮が誘発されたことが強く示唆された(Coronary Artery Disease,2004;15:137-145)。その誘因を検討したところ、バルーン損傷による時間経過とともに冠状静脈洞でのエンドセリン-1(ET-1)とACh投与にるET-1の濃度が有意に増加していることが判明した。さらに、冠微小血管レベルでeNOS発現も低下し、活性酸素種(ROS)産生が増加していた。ET-1 A型受容体拮抗薬を内皮損傷モデルに投与したところ、ACh誘導による冠血流低下、eNOS発現低下、ROS産生が阻止された。これらの事実はLAD血管内皮細胞損傷はその末梢微小血管の内皮細胞不全を引き起こし、ROS産生も巻き込んでET-1産生を高め、ET-1が冠微小血管攣縮の一因と考えられた。末梢の微小血管レベルでROS産生源を調べたところ、p22phoxやgp47phoxが冠攣縮モデルで活性化しており、太い血管での内皮損傷が末梢の微小血管でのNADPH oxidase活性化を誘導すると考えられた。さらに、冠攣縮にCa2+感受性亢進のRhoA活性化が関与することが知られており、アゴニスト刺激によるゲラニルゲラニル化を介する極めて迅速なRhoA活性化の存在を明らかにした(J Biol Chem 2005;280;10182-10188)。しかし、この迅速なRhoA活性化と冠攣縮における血管内皮細胞不全との関連は今後検討する必要がある。
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