研究概要 |
心筋梗塞を惹起する冠動脈血栓などの動脈閉塞性血栓は、血管壁の損傷部位に集積した血小板と、活性化血小板周囲で形成されたフィブリンの混合血栓よりなる。心筋梗塞の発症を効率的に予防する抗血栓薬を開発するためには、血管壁損傷部位における血小板の形成と、その周囲における凝固系の活性化を同時に評価する系が必須である。平成15年度には、血小板血栓と周囲の凝固系の括性化を同時に評価できる多色蛍光イメージングシステムを開発することを目的に研究を行った。 損傷血管壁のモデルとして、コラーゲンを固相化したガラス表面を用いた。緑の蛍光を発するメパクリンで蛍光標識した血小板をコラーゲン表面上に1,500s^<-1>のずり速度で灌流した。血小板血栓の形成過程を蛍光顕微鏡にて連続的に観察した。血栓が成長したのち、赤の蛍光を発するAlexaFluor 595で蛍光標識した抗フィブリンモノマーモノクローン抗体を作用させた。血小板血栓周囲、特に血栓の下流側にフィブリンモノマーの形成を認めた。灌流した血液中に選択的抗トロンビン薬であるアルガトロバンを、様々な終濃度となるように添加した。血小板血栓周囲の赤色蛍光は、アルガトロバンにより容量依存性に抑制された。赤色蛍光の集積が活性化血小板によるトロンビン生産を反映することが示唆された。単一血小板を標的として、高速レーザー共焦点顕微鏡により活性化血小板周囲の凝固系活性化のイメージングを試みた。定性的には血小板周囲のフィブリンモノマーの産生を示すことが可能となった。定量化に向けて、装置、実験条件の改善を続けている。 活性化血小板上に形成されたトロンビンは、自らのトロンビン受容体を刺激して血小板血栓の3次元的成長と血栓の安定化にかかわることも示した。平成16年度に計画しているメカニズムの解明、選択的阻害薬の開発を行う環境は整った。
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