研究概要 |
<目的>胚性幹細胞(ES細胞)という未知の細胞の特徴を明らかにすることにある。 <方法>パッチクランプ法、蛍光色素を用いたconfocal microscopy、RT-PCR法を用いた。 <結果>マウスES細胞にATPを加えると細胞内Ca濃度の一過性上昇が認められた。予めinositol 1,4,5-triphosphate(IP3)レセプター抑制剤である2-amino-ethoxydiphenyl borate(2-APB)で灌流しておくとATPの効果は抑制された。histamine投与でもATPと同様に細胞内Ca濃度上昇を認めた。しかしこの効果も2-APBで抑制された。この結果からIP3 induced Ca releaseがマウスES細胞において起きていることがわかった。またRT-PCR法からもIP3レセプターのサブタイプI,II,IIIをコードするmRNAが検出された。一方、マウスES細胞にカフェインやリアノジンを加えても細胞内Ca濃度に変化は認められず、RT-PCR法でもES細胞にはリアノジンレセプターのmRNA発現は認められなかった。次にマウスES細胞内へのCa流入の機序について検討した。Confocal imagingを用いた実験で、細胞外Caを0mMとしてthapsigargineで前処理したES細胞にさらにhistamineを加えておき、筋小胞体Caを枯渇させておく。ここで細胞外Ca濃度を4mMにすると細胞内Ca濃度の上昇が認められた。この変化はLaで抑制されたことから細胞内Ca流入機序としてstore operated Ca current(SOCC)の関与が示唆された。電気生理学的検討においても+60mV付近で逆転する内向き電流が記録され、この電流はLaで抑制された。以上よりマウスES細胞内へのCa流入はstore operated Ca channelを介しており、また筋小胞体からのCa放出はIP3レセプター依存性におきていることが明らかになった。次年度においてはこれが心筋への発生過程でどのように変化していくかを引き続き研究していく予定である。
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