研究課題
心肥大に関与する転写因子NFATファミリーとその活性化因子カルシニューリンについて、特異的阻害剤の開発およびNFATサブタイプ特異的な機能の解明をおこなった。アルファースクリーン法による、NFATとカルシニューリンとの結合を定量的に、かつ迅速に解析するシステムを構築した。このシステムを用いて、カルシニューリンとNFATの結合を阻害する、NFAT由来のペプチドや、低分子化合物のスクリーニングをおこなった。スクリーニングの結果複数の低分子化合物が結合阻害活性を示した。さらに、レポーターアッセーを用いて、NFAT依存的転写誘導活性に対する効果を検討したところ、その中の複数の化合物は、転写誘導活性を阻害した。リンパ球において、内在性のNFAT制御遺伝子の発現が抑制されることも確認された。心筋細胞へは、レンチウイルスベクターを用いて遺伝子導入をおこなった。GFPを発現するベクターで、導入効率を検討したが、導入遺伝子の効果を解析できるのに必要な導入効率が得られなかった。NFATのカルシウム制御領域に見いだされるカルシニューリン結合領域(CNBR ; Calcineurin Binding Region)として、N末に位置し、各サブタイプで保存されているCNBR1とC末に位置し、CNBR1より保存の程度が低いCNBR2の解析を行ったが、これらの結合領域では、サブタイプによる差異は見いだされなかった。新たにCNBR1とCNBR2にはさまれた部分に存在し、核局在シグナルを含む領域が、第3のカルシニューリン結合領域であることを見いだした(投稿準備中)。この結合領域の配列を含むペプチドは、NFAT1およびNFAT2のカルシニューリンに対する結合は阻害するが、NFAT3およびNFAT4の結合は阻害せず、サブタイプ特異的な結合領域であることが示された。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (1件)
FEBS Letter 570
ページ: 53-58