研究課題/領域番号 |
15590782
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
松岡 秀洋 久留米大学, 医学部, 講師 (80248393)
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研究分担者 |
菅野 良 久留米大学, 医学部, 助手 (80330819)
服巻 信也 久留米大学, 医学部, 講師 (90248352)
古賀 靖敏 久留米大学, 医学部, 助教授 (00225400)
梅井 秀和 久留米大学, 医学部, 助手 (90360289)
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キーワード | 動脈硬化 / 血管内皮 / 酸化ストレス / ミトコンドリア / 抗酸化物質 / 活性酸素種 / 一酸化窒素 |
研究概要 |
近年、高血圧・高脂血症・糖尿病などの所謂「生活習慣病」急激な増加に伴い、これらの症候群にもたらされる心血管合併症の機序解明と対策が急務となっている。活性酸素種による脂質過酸化や核酸や蛋白の修飾は、加齢や癌の発症プロセスに密接に関連することが示唆されてきたが、高血圧・高脂血症・糖尿病における血管病変形成に重要な役割を果たすことが明らかになっている。活性酸素種の産生源であるキサンチンオキシダーゼ・NAD/NADPHオキシダーゼなどが動脈硬化病変において発現しており、炎症性サイトカインや血管収縮ペプチドなどの種々の動脈硬化促進因子により、活性酸素種産生が刺激されることが報告されているが、これらをターゲットとした治療戦略が必ずしも成功しているとは言い難い。 ミトコンドリアは呼吸・エネルギー産生を通じて細胞の生存に必須の細胞内器官であるが、その課程で大量の酸素を消費し電子伝達系からのelectron leakageが頻発することから、体内で最大の活性酸素種発生源となっている。そこで、我々は先天的なミトコンドリアtRNAの変異により起こるミトコンドリア脳筋症において、若年発症の血管病が多発しその血管内皮細胞に異常ミトコンドリアが集積することに着目した。血管内皮は一酸化窒素NOを始めとする多くの血管作動物質を産生し局所血流を維持するのみならず血球成分の接着迷入抑制・脂質沈着や細胞外基質増加抑制などを通じてそれ自身で血管保護作用を有する。そこで、この遺伝的ミトコンドリア機能異常症の患者において、内皮由来NOにより制御されている血流依存性血管拡張反応を評価したところ、その反応が殆ど消失していることを発見し、これが抗酸化ビタミンであるアスコルビン酸・トコフェロールの投与により劇的に改善することを報告した。この事実は、ヒトのミトコンドリア機能異常において過剰に活性酸素種が産生され血管内皮機能異常を通じて心血管病をもたらすことを示唆する。
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