研究概要 |
心房細動の原因のひとつに炎症が関与している可能性がある。例えば、心臓手術後に心房細動を合併することが多い(25-40%)が、術後6時間をピークにinterleukin-6が著明に増加し、術後2日をピークにCRPが増加するといわれている。事実、心房細動は術後2-3日に最も起こりやすい。無菌性心膜炎犬でも心房細動が誘発されるが、そのメカニズムは明らかにされていない。一方、心房筋の炎症性変化は心臓手術歴のない心房細動患者でも認められる。すなわち、孤立性心房細動患者の心房筋生検では炎症細胞浸潤、細胞壊死、線維化が認められたという報告がある。また、Chungらは心房細動患者ではCRPが対照群より有意に高値であったと報告した。しかし、その電気生理学的メカニズムは不明である。そこで、我々は無菌性心膜炎心房細動モデルで、炎症が心房の電気生理学的変化に及ぼす影響を検討した。ビーグル犬12頭を用いて、無菌性心膜炎を作成した。術後2日後、持続性心房細動(>200秒,平均540±35秒)が7頭で、非持続性心房細動AF(<200秒,平均82±84秒)が5頭で誘発された。持続性心房細動の方が非持続性心房細動より有意にCRPが高く(11.8±1.3 vs.7.2±0.6mg/dL,p<0.001)、不応期が短く(122±4 vs.139±13ms,p<0.05)、心房内伝導時間が長かった(56±7 vs.46±5ms,p<0.05)。また、心房筋の病理学的変化は、持続性心房細動の方が非持続性心房細動より、炎症細胞浸潤および線維化が著明に認められた。このように、炎症は心房細動持続のために必須であるリエントリーに必要な電気生理学的基質の形成に重要な役割を果たしていると考えられた。
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