我々は無菌性心膜炎心房細動モデルで、心房細動中には不安定リエントリーが形成されることを報告した。スタチンは抗炎症作用を持つため、本モデルにおいて抗細動効果が期待される。そこで、スタチンの心房電気生理学的・構造学的リモデリングに及ぼす影響を検討した。ビーグル犬20頭を用いて、ランダムに対照群10頭とスタチン(Atorvastatin)投与群10頭の2群に分けた。Atorvastatinは10mg/kg/dayの経口投与を手術1週間前より開始し、試験終了まで継続投与した。まず、心房細動誘発率、心房細動の持続時間、心房有効不応期、心房内伝導速度を測定し、検査終了後、心膜炎を作成した。術前、術後2日目に血液・生化学検査及び電気生理学的検査を行った。対照群とAtorvastatin投与群の2群間でパラメータを比較した。術後2日後、スタチン群の方が、対照群より有意にCRPが低く、不応期が長く、心房内伝導時問が短かった。また、スタチン群の方が、対照群より有意に心房細動の持続を予防した。さらに、心房の病理学的検索では、スタチン群の方が有意に炎症細胞浸潤や線維化が抑制された。このように、スタチンは主にその抗炎症作用により、リエントリーの形成に必須な心房基質の進行を予防し、心房細動のリモデリングを予防したと考えられた。
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