研究概要 |
我々は、IL-17がラット角膜法で新生血管を誘導することより、IL-17が新規の強力な血管新生因子であることを初めて見出した(Blood,2003)。この研究を基に、IL-17の肺癌への生物学的影響を検討した。IL-17を産生していない2種類の異なるヒト非小細胞肺癌細胞株に発現ベクターを用いてヒトIL-17 cDNAを導入すると、肺癌細胞のin vitroの増殖は変化しないが、肺癌細胞からの主要な血管新生因子であるIL-8及びGRO-alphaの産生を選択的に増加することにより、非小細胞肺癌の血管新生能を著明に増強し、SCID mouseに接種した際、in vivoの増殖を腫瘍血管新生を促進することにより著明に増強することを見出した。また、手術により摘出された非小細胞肺癌組織から抽出したmRNAを用いた解析により、非小細胞肺癌患者の約70%の癌組織でIL-17のmRNAがPCR法により検出され、肺癌組織でのIL-17のmRNAの発現と肺癌組織の腫瘍血管密度には強い正の相関が見いだされた。すなわち、IL-17のmRNAがPCR法により検出された群の肺癌組織の腫瘍血管密度は、IL-17のmRNAがPCR法により検出されなかった群の腫瘍血管密度より明らかに高かった(submit for publication)。また、肺癌組織の免疫染色より肺癌組織に浸潤しているリンバ球はCD4 T cellが優位であることが判明した。以上の実験結果は,非小細胞肺癌組織において産生されるIL-17は非小細胞肺癌の誘導する腫瘍血管新生増強因子として作用する事を示唆している。
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