肺癌の誘導する血管新生における新規血管新生因子IL-17の役割と機序の解析 我々は、interleukin-17(IL-17)の非小細胞肺癌の誘導する腫瘍血管新生における役割と機序を解明するため、IL-17のヒト非小細胞肺癌細胞株Sq-19、LK-87及びA549細胞に対する作用を検討した。IL-17はヒト非小細胞肺癌細胞株Sq-19、LK-87及びA549細胞の増殖には影響しなかったが、Sq-19、LK-87及びA549細胞から非小細胞肺癌細胞の主要な血管新生因子IL-8、ENA-78及びGRO-alphaの産生を選択的に著明に増強した。反対に非小細胞肺癌細胞の産生する血管新生阻害因子であるIP-10やMIGの産生には影響しなかった。さらにIL-17発現ベクターを構築し、ヒト非小細胞肺癌細胞株Sq-19及びA549に遺伝子導入した。IL-17を遺伝子導入したSq-19IL-17及びA549IL-17細胞は、Sq-19WT、Sq-19Neo及びA549WT、A549Neoに比較して、SCID mouseでのin vivoの増殖が著明に増強した。CD31の免疫組織染色による検討により、Sq-19-IL-17及びA549IL-17腫瘍組織の血管密度が増加していることが判明した。SCID mouseにCXCR-2の阻害抗体を投与すると、IL-17の非小細胞肺癌細胞のin vivoの増殖促進作用がほぼ完全に消失することを判明した。手術摘出非小細胞肺癌組織の免疫組織染色による検討の結果、非小細胞肺癌組織でIL-17の産生している細胞は、浸潤しているTリンパ球で、非小細胞肺癌細胞自身にはIL-17の産生が認められなかった。これらの研究結果より、非小細胞肺癌組織に浸潤しているTリンパ球より産生されたIL-17がパラクライン的に非小細胞肺癌細胞に作用して、非小細胞肺癌細胞からの腫瘍血管新生因子の産生を増強することで腫瘍血管新生を増強し、非小細胞肺癌の増殖を促進している可能性が示唆された。
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