まず今年度は高齢脳梗塞後遺症患者の遅延した嚥下反射及び咳反射に対する口腔侵害刺激の作用の研究をおこなった。施設入所の高齢脳梗塞後遺症患者において、一ヶ月間毎食後、口腔侵害刺激(口腔ケア)を行い嚥下反射、咳反射の潜時の変化を調べる。嚥下反射は従来我々が行ってきた、口蓋垂の高さまで挿入したチューブより1ccの蒸留水を注入する方法による。咳反射は様々な濃度のクエン酸を希釈したのをウルトラネブライザーにて吸入させ咳が誘発される閾値を調べることによる。すると一ヶ月の口腔侵害刺激により、嚥下反射のみならず咳反射が改善することがわかった。その2つの気道防御反射の改善が肺炎の予防に大きく寄与することが判明した。またこれまで咳反射を改善する方法は限られていたのでこのことは咳反射が低下している患者(高齢者やパーキンソン病患者)にとって朗報である。この結果はアメリカの専門誌に投稿中である。 次に高齢者嚥下困難患者におけるカプサイシントローチの効果の検討した。高齢者収容施設にて嚥下困難患者に、慢性的にVR1レセプターを刺激する方法として開発したカプサイシントローチを毎食前、1錠嘗めて頂く。それを1月後、6ヵ月後の嚥下反射を測定した。さらに半年間の肺炎の発症、認知機能、Activity of Daily Living (ADL)、Instrumental IADL、Geriatric Depression Scale、血中または唾液中サブスタンスPの濃度の変化を調べた。するとカプサイシントローチは一ヶ月後に嚥下反射を改善することが判明した。このことは嚥下反射が低下した患者(高齢者やパーキンソン病患者)にとって朗報である。この結果はアメリカの専門誌に投稿準備中である。
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