平成15年度の研究より、高齢者の嚥下反射はたとえ障害されたとしても温度依存性であり、温度感受性受容体の一つであるTRPV1刺激により効率的に改善されることが判明した。そこでTRPV1を持続的に刺激することにより嚥下反射が改善されるかどうか、TRPV1アゴニストであるカプサイシンの含有トローチを作成してそれを嚥下反射が遅延した高齢者に投与し、その効果を調べることを目的とする。『方法』カプサイシントローチ及びそのプラセボを、施設入所中の高齢者をランダムに2群に分け投与し、一ヶ月の中期投与の効果をみる。アウトカムとしては気道防御能としての嚥下反射、咳反射それとADL、認知機能、血中サブスタンスP量などを測定。嚥下反射は鼻腔より挿入した細いカテーテルから1ccの蒸留水により誘発し、その潜時を測定。また、咳反射は段階的に希釈したクエン酸の最小誘発濃度により評価する。『結果』一ヶ月の毎食前のカプサイシン投与により、カプサイシン含有トローチ群においてプラセボ群と比べ、有意に嚥下反射および咳反射が改善した。高齢者の食事は得てして、単調な味付けになりがちである。また、温度なども作りおきの室温になりがちである。『考察と結論』この研究を通して口腔および咽頭部のTRPV1の慢性刺激が嚥下反射を改善することが証明された。高齢者の障害された嚥下反射はカプサイシントローチにより改善されることが判明した。本トローチの投与は高齢者の誤嚥性肺炎の予防につながるものと思われる。 さらに今後はその他の温度感受性受容体刺激についても調べる。
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