研究概要 |
IPFの進展機序としては,上皮障害とそれに続く治癒過程の修復と再構築における異常から線維化を来すことが指摘されている.過去の報告では,線維化巣から採取した線維芽細胞の増殖能が高いことや,その遊走能が亢進していることがin vitroにおいて示されているが,線維化肺における線維芽細胞そのものの生物学的動態に異常があるのか否かの結論は得られていない. 近年,癌抑制遺伝子である、Rβ遺伝子とp53遺伝子がともに細胞周期制御に深く関与していることが判明し,細胞の癌化シグナルは最終的にはRB経路またはp53経路と呼ばれる経路に集約されると考えられている.IPFにおいても,細胞周期という点から考えると,線維芽細胞の細胞周期制御因子に異常をきたしている可能性が想定された. 1992年から2000年までに外科的肺生検を施行され,病理組織学的にIPF/UIPと診断された11症例(男性7例,女性4例,平均年齢62.8歳)を対象とし,外科的肺生検検体を用いてpRB, p27の免疫組織化学染色を行い,線維化肺の線維芽細胞における発現の程度を検討した.その結果,pRBは周辺組織(単核球や肺胞Mφ,肺胞上皮細胞)に比較して,発現量が低下している傾向を認めた.またp27では周辺組織と同程度に染色され,同部位におけるp27の発現には異常はみられなかった.これらの結果よりIPF/UIPの線維芽細胞では,pRBの異常が示唆され,線維化肺における線維芽細胞は何らかの細胞周期異常を来していることが推測された.
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