研究概要 |
樹状細胞(dendritic cell, DC)を用いたより強力な抗結核ワクチンを開発するために,結核菌由来の抗原蛋白と共にIL-1遺伝子を導入したDCワクチンを作製し,その有効性を初感染および再燃結核感染症モデルで検討し,さらに,この遺伝子導入DCワクチンの結核感染症に対する治療効果を確認し,MDR-TBを含む結核感染症の治療におけるDCワクチンの有用性を明らかにすることを目的として,研究を進行中であり,今年度は,まず,遺伝子導入DCワクチンの開発を行った. 結核菌の主要な分泌蛋白であり,且つ感染防御誘導蛋白でもあるAg85A,Ag85B蛋白をコードするcDNAと(長崎大学から供与),また,マウスIL-12遺伝子のplasmid(ATCC)を入手し,IRESをもつpMX vectorに,IRESの前後に挿入した.さらに,これをリン酸カルシウム法を用いてレトロウイルスのpackaging cellであるPhoenix cellに遺伝子導入し,培養上清から前述の遺伝子を含んだレトロウイルス粒子を回収した.これを,マウスの骨髄から培養したDCに,spin infection法を用いて感染させ,Ag85A,Ag85B蛋白と共にIL-12遺伝子が導入されたDCワクチンを作製した.目的遺伝子の導入は,制限酵素を用いて確認した. 次に,この遺伝子導入DCが,IL-12を産生することを確認するために,培養上清中のIL-12p70をELISAにて測定し,pg/ml orderのIL-12p70蛋白が産生されていることが明らかとなった.さらに,このIL-12p70が機能的にもintactであることを証明するために,IL-12依存性に増殖するPHA刺激T細胞を用いて増殖活性を検討したところ,遺伝子導入DCの培養上清には強い増殖活性があることが判明した.したがって,遺伝子導入DCはfunctional IL-12を産生することが確認された.
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