研究概要 |
閉塞性細気管支炎は、病理学的には細気管支周囲の線維化や瘢痕化による細気管支内腔が狭小化や閉塞をきたす病態として知られているが、その病因は不明であり、有効な治療法もない。近年、骨髄移植や心肺移植患者での閉塞性細気管支炎の合併が報告され、リンパ球、マクロファージをはじめとする免疫担当細胞の関与が推測されている。特に、自己抗原や移植片に反応し活性化された肺胞マクロファージとリンパ球応答が、細気管支の炎症の惹起と線維化において重要な役割を果すことが考えられる。本研究では、遺伝子改変マウスを用いて閉塞性細気管支炎ならびに肺障害発症メカニズムについて検討することを目的とした。平成15年度には、CD40分子を欠損したマウス(CD40遺伝子欠損マウス)を用いた研究を実施した。ほん年度は、さらに、骨髄細胞の役割を検討するために、GFP-Transgenic mouseを用いた研究の知見を発展させた。また、Sauropus Androgynus (SA)による閉塞性細気管支炎の発症が報告され、薬剤性肺障害としての閉塞性細気管支炎はほとんど報告がないため、SAによる閉塞性細気管支炎発症のメカニズムについて、In vitroでの実験を開始した。その結果、1)GFP-Transgenic mouseについては、肺障害修復の過程における細胞の起源として、骨髄由来細胞の関与の重要性が明らかになってきた。2)SAを用いた実験では、SAの刺激により腫瘍壊死因子(TNF-α)が極めて強く産生されるが、CXCL9,CXCL10のケモカインの産生はほとんど誘導されないことが明らかになった。以上の結果より、閉塞性細気管支炎発症のメカニズムとして病変局所でのTNFが重要であること、他のびまん性肺疾患と異なり細胞集積がきわめて軽度である病変を反映して、ケモカインの閉塞性細気管支炎病態形成への関与は低いことが推測された。
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