研究概要 |
呼気凝集液(Breath Condensate)は被験者の呼気を冷却機に通して氷結させ集めた溶液であり、非侵襲的に得られる検体である。呼気凝集液中にはNitric Oxideなどの気体・揮発性物質とともに、Prostaglandin、Lieukotriene、サイトカイン、腫瘍マーカー物質などが検出できると報告されている。肺癌の診断・治療管理には侵襲的な検査が多く必要であるが、呼気凝集液の肺癌の診療における有用性について検討をおこなった。 平成15年度はベッドサイドにて呼気凝集液を採取できるように呼気凝集法の改良を行い、携帯できる器具を開発した。器具の改良により、呼気凝集液が容易に集めることができるようになった。 同器具を用いて、平成15、16年度にわたって、肺癌患者20例の呼気凝集液を採取した。更にそのうち10例に対して気管支鏡検査を行い気道上皮被覆液を採取し、IL-6,IL-8,TGFβ,CEA,CYFRA,SCC,PGE2の測定をおこなった。気道上皮被覆液では、PGE2・IL-8は全例で測定可能であった、IL6は半数において測定可能であった。また、腫瘍マーカーは末梢血で高値であった症例において測定をおこなったが、同様に約半数の症例で高値であった。それに対して呼気凝集液ではPGE2が1例でのみ測定可能であったが、測定したサイトカイン・腫瘍マーカーで測定可能なものはなかった。以上から現在のところ呼気凝集液は肺癌患者の臨床検査としては有用性はないという結果を得ている。 今後更にNitric Oxide, Hydrogen Peroxideなど揮発性物質の検討を行い、最終報告とする予定である。
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