研究概要 |
ヒト肺癌細胞株においてSTAT-3の活性化をその分子のリン酸化を指標にウエスタンブロッド法で検討した。A549ではリン酸化STAT-3は無刺激では弱い発現を認め、IL-6の存在下では発現が増強した。同時に、STAT-3のシグナル経路を抑制するPIAS3の発現も検討した。いずれの細胞株でも恒常的に発現しており、IL-6刺激によっても発現は変化しなかった。また、悪性中皮腫細胞株MT-37はepidermal growth factor(EGF)により発現が増強されることを確認した。 これをもとに、STAT-3の活性化した肺癌細胞株A549細胞に対し、活性化したJak-STATシグナル経路を抑制する目的で、PIAS3の発現ベクターを導入したstable transformantを樹立した。PIAS3遺伝子を導入したA549のクローンは、IL-6の刺激下でもリン酸化STAT-3は誘導されないことを確認した。つづいて細胞増殖能、薬剤感受性について検討をおこなった。 細胞増殖能を細胞のdoubling timeで比較した。wild typeとPIAS3クローンのそれはともに約20時間であり、両者に差を認めなかった。一方、アデノウイルスでSOCS-3遺伝子を強制発現すると、細胞の増殖を有意に抑制した。PIAS3クローンとwild typeの薬剤感受性を検討した。増殖を50%抑制する薬剤濃度IC50はそれぞれの抗癌剤では、Carboplatin:>1000 nM(>1000 nM),paclitaxel:1 nM(2 nM),vinorelbine 8 nM(8 nM),SN38 10 nM(10 nM)(括弧内はwild typeのIC50),と差を認めなかった。 これらのPIAS3導入したクローンではIL-6刺激によるリン酸化STAT5は抑制されていないことから、Jak-STAT経路が十分に抑制されていないことが一因と考えられる。
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