進行肺癌患者を中心に成熟樹状細胞を用いた特異的免疫療法の臨床第I相試験を開始した。本臨床試験では、樹状細胞の成熟化因子としてOK432(ピシバニール)を使用していること、これまでに報告の少ない肺癌患者を中心とした固形癌を対象としていることに特長がある。また癌抗原ペプチドとしてMAGE-3ペプチドを使用し、HLA-A^*2402患者を対象とした。本臨床試験は、一回の樹状細胞投与数によりグループ1(1x10^7個)、グループ2(3x10^7個)、グループ3(1x10^8個)に分けた容量増加試験である。これまでに、グループ1の3例、グループ2の3例を終了した。治療における有害事象は、grade2までの発熱と、grade1までの注射局所の皮膚反応(発赤、硬結)であり、重篤な有害事象は認められず、一回3x10^7個の樹状細胞数までは安全に投与可能であることが明らかとなった。一方、免疫誘導効果を見るために施工した遅延型皮膚反応(DTH)の結果、グループ1では4回のワクチン終了後にMAGE-3ペプチドに対するDTHが陽転したのは3例中1例であった。コントロール抗原として用いたKLHは全例で陽転化したが、3例とも4回のワクチン投与後であった。グループ2では全例でKLH、MAGE-3ともにDTHが陽転化した。さらに、ワクチンを2回投与後の時点でみても、KLHは全例で、MAGE-3は1例でDTHが陽転化しており明らかに免疫誘導効果の増強を認めた。臨床効果はグループ2の1例でSDを認めたが、他の症例はPDであった。次年度には、グループ3(一回1x10^8個)の試験を進め安全性と臨床効果を検討する予定である。 一方、OK-432の樹状細胞活性化に関する基礎的検討から、Toll-like receptor(TLR)4の重要性を見出し報告した。
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