研究概要 |
初年度で、気管支喘息病態におけるJAK-STATの抑制系であるサイトカインシグナル抑制因子(suppressor of cytokine signaling, SOCS)の役割を検討するため、アトピー性気管支喘息患者の末梢血よりT細胞を分離し各SOCSの発現を解析した。末梢血T細胞でのSOCS3発現はアトピー性喘息患者で有意に高値であり、重症度が増すにつれSOCS3発現が亢進していた。また、T細胞特異的にSOCS3を恒常的に過剰発現している(SOCS3-Tg)マウスのT細胞を用いた解析により、SOCS3は、IL-4によりTh2細胞特異的に発現し、Th1分化誘導に必要なIL-12のシグナルを抑制することによりTh2分化を促進して、アレルギー性喘息反応の発症進展に重要な役割を担っていることが明らかとなった。 また、Ras-ERK/MAPK系は、免疫/アレルギー領域でTh1/Th2分化に作用することか報告されていたため、2年度目に、喘息病態Ras-ERK/MAPKの抑制系の一つSprouty-related EVH1-domain-containing protein(SPRED)-1の役割を検討した。OVA喘息モデルでは、SPRED-1を不活化すると好酸球性炎症が顕著で気道過敏性亢進と粘液過分泌がみられたが、気道でのIL-4、IL-5発現や血中IgEには差がなかった。これはSPRED-1がTh1/Th2分化に影響しているというものではなく、IL-5に対する好酸球分化増殖反応が増強していることによるものであった。すなわち、SPRED-1はIL-5シグナルのうちRas-ERK抑制系として作用し、喘息病態を調節していることを見出した。 以上のように、サイトカインシグナルの制御因子であるSOCSやSPREDは、喘息病態に重要な役割を担っており、重症喘息の治療標的の一つになると考えられた。
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