研究概要 |
急性好酸球性肺炎は、発熱、急性呼吸不全、びまん性浸潤影、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球増加を特徴とする疾患であり、本邦においては喫煙との関連が検討されている.我々は、喫煙が原因と考えられる急性好酸球性肺炎10例について、その発症機序を明らかにする目的で、BALFおよびBAL細胞におけるケモカイン、サイトカインの発現について検討した. 急性好酸球性肺炎患者のBALF中のTARC、MDC、IL-4、GM-CSFは健常ボランチィアと比較して有意に高値であった.特に、TARCは大部分のサルコイドーシス、過敏性肺炎、特発性肺線維症患者では検出不能であるのに対して、急性好酸球性肺炎では著明高値であった.BALF中TARC, MDCはともにBALF中IL-4,IL-5,IL-13とも正の相関を示し、またTARC, MDC濃度の間には正の相関が認められた.しかし、二重染色ではTARC, MDCの由来は異なっており、TARC産生細胞はCD1陽性の樹状細胞であり、MDC産生細胞は肺胞マクロファージであった.患者由来BAL細胞を各種サイトカインを添加して培養したところ、IL-4の刺激でTARC, MDCの産生亢進が認められた.一方,IFN-_γ刺激下では両ケモカインの産生は低下した.TNF-α,LPSはTARC, MDCの産生に影響しなかった.さらに急性好酸球性肺炎患者に喫煙刺激を行った後に採取したBAL細胞からのTARC, MDCの産生は喫煙前に比較して著明に増加していた. 以上のことから、喫煙刺激により肺胞細胞からのTARC, MDCの産生が亢進し、そのため肺に集積したTh2細胞からIL-4,IL-5,IL-13などのTh2サイトカインの分泌が生じ、好酸球性炎症を惹起する機序が存在することが考えられた. 以上の結果は、Clinical Immunologyに掲載予定である.
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