研究概要 |
シナプス伝達によらずにPCO_2/pHの変化に反応してその膜電位を変化させる化学感受性ニューロンは脳幹に広く分布しており、これらのニューロンの電気的活動の変化がいわゆる呼吸の中枢性化学感受性の本質であると推察されている。内向き整流性カリウムチャネル(Kir)のうちIRKサブファミリー(Kir2.1,2.2,2.3)は主にニューロン、心筋細胞に発現し、静止膜電位の設定とその安定化に関与していると考えられている。IRK以外のKirの一部には細胞内アシドーシスに反応してそのコンダクタンスを変化させるものがある。したがって、化学感受性ニューロン膜電位のPCO_2/pHの変化に対する反応も静止膜電位を主に規定しているIRKのコンダクタンスの変化に起因する可能性がある。本研究は呼吸の中枢性化学感受性におけるIRKの役割を検討することを目的としている。 本年度は、青斑核ニューロンおよび新生ラット摘出脳幹脊髄標本における呼吸関連ニューロンに発現しているIRKの同定を目的として実験をおこなっている。オリゴヌクレオチドプローブを用いた非RI(放射性同位元素)標識in situ hybridizationプロトコールの最適化に苦慮している段階であり、まとまった知見は得られていない。しかしながら、この間、平行しておこなったKir2.2ノックアウトマウスの高炭酸ガス換気応答およびFVBマウス(Kir2.2ノックアウトマウスと同一の遺伝的背景を有する)の脳幹におけるKir2.2 m-RNA発現の検討から、Kir2.2が日齢依存性に高炭酸ガス換気応答に関与している可能性が示唆された(平成16年3月第44回日本呼吸器学会で発表予定)。
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