気道過敏性の形成に関与する新たなサイトカインおよびケモカインを同定する目的で、マウスの喘息モデルでcDNAアレイを用いた網羅的解析を施行した。その結果、アレルゲン吸入後6時間にCCL19およびCCL21の著明な増加を認めた。CCL19およびCCL21は樹状細胞のリンパ節へのホーミングに関与するケモカインとして知られており、その欠損マウスでは2次リンパ節の形成不全に陥る。そこで、喘息病態の中での役割を明らかにするため、CCL19およびCCL21の欠損マウスであるplt/pltマウスを用いて検討した。OVAとアラムで免疫後、1週間目のIgE抗体価はplt/pltマウスで野生型のBALB/cマウスと比較して有意に低値であったが4週以降は両者の差異は消失した。さらにOVA吸入開始後の気道炎症についても、発現は弱いものの惹起でき、好酸球浸潤も認めた。BALB/cマウスはOVA吸入中止後、速やかに好酸球浸潤の改善を認め、1ヶ月後には気道過敏性も改善した。一方、plt/pltマウスでは、OVA吸入中止後もリンパ球の浸潤および気道過敏性の亢進が持続した。CCL19およびCCL21の欠損により、アレルギー炎症惹起は遅れて弱くなるが、必須ではなく、気道過敏性の改善に必須であった。フロサイトメトリーを用いての解析により、気道過敏性の改善には、樹状細胞およびT細胞が関与していることが示唆された。喘息の病態形成の中で今まで注目されていなかったCCL19およびCCL21の役割について、特に炎症の終息、気道過敏性の改善に重要な役割を果たしていることを明らかにできた。 気道過敏性とTh2細胞の関連を明確にするため、Th2サイトカインの転写に必須であるGATA-3を強発現したマウスを用いて、気道過敏性形成への役割を検討した。結果として、T細胞の転写をコントロールすることにより、好酸球優位な炎症を惹起しなくても、気道過敏性を誘導てきることが明らかにできた。
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