平成15年度に引き続き、骨髄幹細胞の末梢血への動員によりマウスの肺気腫病変が改善されるかについて検討した。8週齢C57/BL/6Jマウスの気管内に豚膵エラスターゼを注入して肺気腫病変モデルを作製した。4週後からgranulocyte-colony stimulating factor (G-CSF)、macrophage-colony stimulating factor (M-CSF)、またはエリスロポイエチンを連日、1から3ヶ月間に渡って皮下または腹腔内注射を行なった。その後、肺を摘出して組織学的な検索を行なった。G-CSFやM-CSFを投与された肺気腫マウスでは平均肺胞壁間距離(Lm)と肺胞腔内容積比率(Vvair)の増大がみられ、気腫病変がむしろ悪化したすることが明らかにされた。この理由として、これらのサイトカインの投与により好中球やマクロファージが活性化されてMMP-9やMMP-12などの肺の破壊に関与するプロテアーゼの産生が増大したためであると考えられた。一方、エリスロポイエチンを投与された肺気腫マウスではLmの約20%の改善がみられた。さらに単位肺胞壁面積あたりの血管数や血管腔面積の増大がみられ、気腫病変の改善とともに肺血管床の増加がみられた。その理由として、末梢血中の血管内皮前駆細胞の数が増加していたことから、骨髄からこれらの幹細胞を肺に動員したためである可能性が考えられた。
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