肺癌の転移過程で重要な因子を捉えるため、ヒト肺癌の高転移株を樹立し、cDNA arrayを用いた網羅的発現プロファイルを親株と比較する事で、転移関連因子を総合的に捉えるとともに、未知の因子の単離を行ってきた。これらの解析により、高転移能の獲得は、単一因子の発現変化ではなく、多数の特定機能を有する因子の発現変化によることを明らかにした。また、肺癌の転移能との関連について報告の無かった因子を単離した。今回、我々は、他のスクリーニング法として、2D-DIGEを用いた二次元電気泳動およびMass spectrometryと抗体アレイによるプロテオーム解析を採用すると共に、より進化したcDN Aarrayで再検する事で、より多くの情報を得た。その結果、新たにGalectin-1の発現増加等をはじめ、cDNA arrayで8個、DIGEを用いた二次元電気泳動およびMass spectrometryで29個、抗体アレイで52個の因子が新たに単離された。これらの情報について機能解析と臨床症例を用いた評価を行うことにより、術後補助療法施行例の選択や治療標的の設定などの臨床に耐えうる確かな因子の選択と応用方法の開発を目指す予定である。現在、Western blotやNorthern blotあるいはreal-time RT-PCR等で確認された因子について随時評価している。2つの因子について、SiRNAによる遺伝子ノックアウトを行い機能を解析している。同時に、6個の因子について臨床症例を用いた評価を行っている。
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