研究概要 |
Rab38ゲノム遺伝子内のGTP/GDP結合部位に起きた点突然変異が原因と報告されているマウス(チョコレートマウス)(PNAS,99:4471,2002)を米国、ジャクソン研究所より輸入し、日本チャールズリバー社に委託してSPF化してから当学動物センターにて繁殖させている。野生型C57BL/6Jの毛色は真黒色であるが、チョコレートマウスは茶褐色であり、白皮症を呈していた。肺よりゲノムDNAを抽出しPCR法でDNA解析したところ上記報告に一致した核酸の点変異が起きておりグリシンがバリンに変異すると推定された。肺を摘出し、気管から固定液を一定圧で注入し膨らませてから組織染色標本を作成した。トルイジンブルー染色ではチョコレートマウスの肺胞II型上皮細胞は野生型に比して大型であり、多くの脂質空胞を有していた。肺を摘出・細切しオスミウム酸で固定後、透過型電顕で観察したところ肺胞II型上皮内に大型の層状封入体が無数に認められた。ヘマトキシリン・エオジン染色肺組織標本について形態計測を行ったところ、チョコレートマウスは野生型マウスに比して肺容量とmean linear intercept (Lm)が有意に大であった。これらのことからRab38が突然変異を起こして正常に機能しなくなるとマウスでは肺気腫が起きることが知られた。この原因に層状封入体の増加・大型化が関与していると推測される。チョコレートマウスでは肺のサーファクタントのうちSP-A, SP-Dは変化がなかったが、SP-Bは肺組織中では増加していたが、肺胞腔では著明に減少していた。また、上記突然変異を起こさせたcDNAクローンを作成した。
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