研究概要 |
全リポキシゲナーゼ阻害剤(5-,12-,15-リポキシゲナーゼ阻害)であるNordihydroguaiaretic acid(NDGA)による肺癌細胞に対する増殖抑制効果は、検討に用いた肺癌細胞株6株すべての増殖を濃度依存的に抑制し、一方12-リポキシゲナーゼ特異的阻害剤baicaleinも濃度依存的に増殖を抑制し抑制機序としてアポトーシスの関与が示唆された。増殖抑制効果はNDGAと比べて低い傾向にあったが、肺癌の治療薬剤であるSN-38、アムルビシン、ビノレルビン、シスプラチン、エトポシドとの併用で、その効果増強作用が観察され、特にSN-38との併用ではIC50値を1/3以下に低下し、その併用における有用性が示唆された。リポキシゲナーゼ阻害剤の作用点は、副作用の多い抗癌剤とは異なり癌細胞で高発現しているリポキシゲナーゼを分子標的としており、今後急増が予想される高齢者肺癌の治療におけるクオリティーオブライフを念頭においた治療、従来の抗癌剤との併用療法等、新しい肺癌の治療への応用が期待された。一方、EGFR遺伝子変異とEGFR受容体阻害剤ゲフィチニブの治療効果との関連性について非小細胞肺がん症例30例を用いて検討した結果、EGFR遺伝子のexon19の欠失変異が7例、exon21のミスセンス変異が5例認められ、ゲフィチニブ感受性はEGFR遺伝子変異の認められた12例中10例で奏効が認められたが、EGFR遺伝子変異の認められない18例では1例(腺癌では12例中1例)にのみ奏効が認められ、EGFR遺伝子変異とゲフィチニブ感受性との間に強い関連性が示唆された。本研究より、肺癌に対してリポキシゲナーゼ阻害剤、EGFR阻害剤、COX-2阻害剤を組み合わせ、また遺伝子変異情報も加味することにより、肺癌に対する有効な治療戦略が構築できるものと期待された。
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